WEBライティング技能検定について考える

『WEBライティング技能検定』という資格教材に興味を持ったので、私なりに所感を書いてみたいと思いました。

WEBライティング技能検定への所感について

私は筑波大学の人文学類、日本語学を卒業して出版の世界に身を置き、

現在は大手出版社に勤務し企画から校正まで諸々の業務に携わっています。

辞書も出している出版社です。

ここまで書いたらもう会社内では私バレバレですかね(笑)

 

仕事上、誌面やWEB媒体での文章を見ることが多いのですが、そんな折、

『WEBライティング技能検定』という資格教材を目にし、非常に興味を

持ったので、私なりに所感を書いてみたいと思いました。

 

まず、WEBライティング技能検定とは一般社団法人日本クラウドソーシング検定協会が

作成したWEBライティングに特化した資格です。

 

この資格及び教材がTwitter等で取り上げられていました。

資格を褒める内容もありましたが、ネガティブな内容もありました。

その内容を簡単に言えば

 

・問題が不適当?

・教材が基礎的なものなので、これではライターは育たないのではないか?

 

という様な2点で構成されています。

 

前者は問題の内容を面白がってリツイートをしたもの、後者は現在ライター業を

やっていると思われる方々がツイートしているもの、といった感じです。

 

これまで、ライターの基準を設ける資格はありませんでした。

その中でWEBライティング技能検定という資格が登場しライターの基準を

定めるというのは大変なことです。

 

もちろんライターに仕事を依頼する状況は多く、一定の能力が確認できればと

常日頃から考えていました。

出版社や扱うメディアによっては、ライティング技術やマナーなどは

そのライターの個性として受け入れ、現場をこなしながら育ってくれればいいか、

というように考える節があります。

 

また、ライターになる基準も曖昧なもので「私はライターです」と言ってしまえば

ライターになれる、という言ったもの勝ち的な状況もあります。

(もちろんその後、大変な文章修行を強いられますし、そのくらいのフットワークの

軽さは必要かもしれませんが)

 

しかし、ブログなどである程度文章を作ったことしかないというくらいの方が、

ライターとして適正な仕事ができるかというと、なかなか難しいといえるでしょう。

そのような状況から、WEBライターの基準を定める資格は画期的であると思います。

 

話は少しずれてしまいましたのでWEBライティング技能検定の話に戻ります。

今回、私も実際に教材を購入して内容を読んだ上でこの話を進めていきます。

誰に頼まれたわけでもありませんので、中立的な立場から評価できればと思います。

 

■WEBライティング技能検定のターゲットは誰になるのか

ターゲットについて語る前にWEBライティング技能検定の教材に触れておきます。

 

このWEBライティング技能検定は、基礎編テキスト、実践編テキスト、基礎編問題集、実践編問題集の教材と案件の手引き(ライティングの仕事をするために知っておくべきことが書かれた冊子)以上5冊の教材で構成されています。

また、おまけとして付録資料ISV練習法(発想力を鍛える冊子)とタイピングの練習教本が付いています。

 

基礎編テキストには、クラウドソーシングサイトで働く為に必要なメールマナーや電話マナー、個人情報の取り扱いについて、文章を作る為の環境作りなど、仕事をする上で必要不可欠な情報がまとめられています。

 

そして、実践編テキストには基礎的な文法や構成についての話から推敲・校正までがまとめられています。更にこれらの知識確認用や試験対策用として、それぞれ問題集が付いているというわけです。

 

察しの良い方はこれだけでもお分かりかもしれませんが、

WEBライティング技能検定は初心者~準中級者に作られた教材といっていいでしょう。

 

所感ですが、このようなライター育成をしてくれる教材があることをありがたく感じます。

ライターにはその人の適正や取材力、キャラクターなどはありますが、基礎から勉強をしてくれる人が集まるとこちらとしては実に楽になるのです。

 

駆け出しライターは、文章の基本を押さえている方があまり多くありません。

クラウドソーシングで活動されているWEBライターであっても同様だと思います。

 

例えば、「て、に、を、は」の正しい使い方や『私の母の弟の鞄』のように

1文に助詞が連続する文章はあまりよくありません。

しかし、このような間違いを繰り返してしまう駆け出しライターは存在します。

 

WEBライティング技能検定のテキストでは、上記のようなミスが起こらないよう、

基礎的な文章構成を中心に教えています。

 

テキストを少々取り上げます。実践編の『PART3 書いてみよう』という章では、

1文に必要な情報量や助詞の使い方、対等と対比など読ませる為に必要な情報で

構成されています。

 

更に特記すべきこととしてSEOについての章があることに触れます。

この教材の大きな売りとしてSEO検索エンジン最適化…検索エンジンの検索結果で

より上位に表示させる手法)についての話が載っていることが挙げられます。

深い内容でありながら、素人にもわかりやすく書かれています。

 

私はインターネットに関して専門外なのでSEOに関しては非常に勉強になりました。

SEOというのは専門性が高く、非常に難易度の高い技術だと言われています。

SEOの知識があり一定の文章作成能力を持った人材が、WEBライティングを行うのであれば、ライターの市場価値は上がるでしょう。

 

私は現在のクラウドソーシングのライティングの現状を全て把握しているわけではありませんが、このテキストはクラウドソーシングで活躍する人に向けた能力育成のために作られたものということがわかります。

 

以上のことを少々整理すると

この教材のターゲットが見えてきます。

 

・テキストは初心者~準中級者向け

・WEBを中心とした文章作成(WEBライティング)を行うための知識を補充する教材

クラウドソーシングで活躍できる人材育成を目的としている

 

これをもとに、今回の批判が起こった理由を少々考えてみましょう。

 

■WEBライティング技能検定の批判が起こる理由

冒頭でも記載しましたが、Twitterで起こった騒ぎの内容を簡単に言えば

 

1・問題が不適当?

2・教材が基礎的なものなので、これではライターは育たないのではないか?

 

この2点です。

その中で『2・教材が基礎的なものなので、これではライターは育たないのではないか?』に関しての話を先にします。

 

この問題を話題に挙げた方は、大きく2つのタイプに分かれます。

 

・教材のターゲットを把握していないまま、ブログやTwitterで拡散した

・誌面ライターやフリーライターが記事を読み、教材に違和感を覚えブログやTwitterで     拡散した

 

要するに教材を買っていない方が、断片的な情報を見て感情的に煽られてしまった、という状況です。

 

フリーライターというのは大変な仕事です。記事の仕事を取り、取材をこなし文章を書く高いプライドと技術が無いと続けられない仕事といえます。

そこへ基礎的な文章作成能力を持ったWEBライターを育成する資格が出てきたのでは面白くないであろうことは簡単に想像できます。

 

この例えは正しいものではありませんが、

吉本興業が芸人育成学校を設立した当初、師弟関係で芸人になった方々が批判的な対応をしたという状況に似ているのかもしれません。

 

そして『1・問題が不適当?』という点について考えてみましょう。

これはWEBライティング技能検定の問題集に記述されている問題にふざけているものがある、という話です。

これも上記の問題に類似しています。2冊の問題集を確認すると、ブログで取り上げられているものしかありませんでしたし概ね真っ当な問題が並んでいました。おそらくブログ記事を読んだ方が面白半分に拡散したものなのでしょう。

 

また、少数意見の中に教材価格についての記載もありました。

教材価格はとして32,000円は高いのではないか?というものです。

これは資格教材として適切もしくは安い部類なのでは?としか答えようがありません。

 

WEBライティング技能検定について批判があったことに非常に興味がありましたが、

調べて見ると、このくらいの問題しか抱えていないことがわかります。

 

今回の問題は、一部の情報を面白がった方が、または一部の情報で嫌悪感を抱いた方が、その感情の共感を得ようとした行為である、と私は思います。

 

■WEBライティング技能検定のメリットとデメリット

その上でWEBライティング技能検定のメリットとデメリットを考えてみましょう。

 

メリットとしては

・初心者がWEBライティングを目指す為には最適の教材である

・資格合格者特典で合格者には活躍の場が増える

SEO検索エンジン最適化)の知識が得られる

 

大きく上記の3つに分類できます。

 

WEBライターに興味がある初心者がこの教材を学習すれば仕事ができる基準を充分に満たしていますし、準中級者くらいであっても知識を補充しステップアップは可能といえます。

 

そして合格者特典ですが、これは資格合格者にクラウドソーシングサイトで活躍の場が増えるようなイメージです。

実際に誌面のライターとして働く場合は、自分で売り込みや営業をしなければならない面を見ると、これは大きなメリットになるかと思います。

 

最後にSEOの知識です。

大雑把に言ってしまえば、誌面のライターはそれぞれ得意分野があり、各分野に特化した文章を書いています。

文章の基礎知識とSEOの知識を備えたWEBライターであれば、ネット媒体でのライティングに貢献できる人材といえます。

 

デメリットとしては

上級者や紙面のライターには不向きな教材、ということに尽きます。

…ですが上級なライターさんにとっても易しい試験で資格を取れ、かなりの特典が享受できるのであればお得な資格だと思いますが….

そこにやっかみを感じる方もいらっしゃるんでしょうね。

 

上級者の方は文法や構成などは既にマスターした分野になるので、この教材に物足りなさを感じてしまうことが想像できます。しかし今後この資格を取得した方々が増えてくればその状況に変化が生まれるかもしれません。

 

■まとめ

今回WEBライティング技能検定という1つの資格から多くのことを考えることができました。物事とは冷静な目で判断することが大切です。一部の情報で感情的に煽られてしまうのは良い状況とは言えません。確かにどの情報を正しいとするかは判断力が必要です。

その中で自分がこれと思えるものを選んでいくしかないのでしょう。

 

またWEBライティング技能検定については、今後、クラウドソーシングの成長と共に需要が増すことが想像できます。

腕のある多くのWEBライターが誕生することによりネット記事のレベルが高まることで、

誌面やWEBのライターが切磋琢磨し相互効果が期待できるかもしれません。

 

近い将来、WEBライターやWEBライティング技能検定の資格合格者に仕事を依頼することになるかと考えると、その楽しみもひとしおです。

 

最後になりますが、誌面やWEB含めてライターの成長と文章の向上を願い締めとさせていただきます。